最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)846号 判決 1972年6月23日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人森英雄、同吉田恵二郎、同山下光、同山本公定の上告理由について。
上告人が原判示の事情による被上告人からの本件土地明渡の要求に応じ、昭和三二年一一月一〇日、双方の代理人の間において、上告人およびその経営する有限会社川村家具店が他に営業の場所を有するに至つたときまたは爾後の営業の方針・計画の樹立、その諸準備に通常要する期間が経過したときを明渡期限と定めて、本件土地の賃貸借契約が合意解約されたものである旨の原判決の事実の認定・判断は、甲第四号証念書の記載の全体の趣旨その他挙示の証拠に照らして、これを肯認することができる。そして、上告人は、従来所有していた横浜市中区伊勢佐木町所在の土地建物を処分する必要を生じ、第三者の仲介により、昭和三二年一一月七日、被上告人の経営する株式会社足立商店との間にこれについての売買契約を締結したが、これに先き立ち、被上告人が買受けの条件として本件土地の明渡を要求したため、双方が弁護士を代理人として交渉を重ねた結果、上告人も右要求に応ずることとして、本件土地賃貸借の期限付合意解約に至つたものであることなど、原判決の確定した事実関係のもとにおいては、右解約の合意につき、賃借人である上告人が真実解約の意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり、他に右合意を不当とする事情は認められないものということができるから、右期限付合意解約は、借地法一一条に該当しないものと解すべきである。したがつて、原判決がその確定した事実関係のもとにおいて本件賃貸借の期限付合意解約を有効とした判断は、所論引用の判例に反するものではなく、結論において正当なものとしてこれを是認することができる。原判決に所論の違法は認められず、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一 裁判官 小川信雄)